高校では演劇部に所属してたのですが、端役しか回ってこなかったのです。
ですが、一度だけ、主役っぽい役をやらせてもらったことがあって、それは県内の高校の演劇部が一堂に会する花山夏合宿においてでした。
実力があったからではなくて、男子が圧倒的少数だったからです。
ともかくも、その時は覚えたことのないぐらい長いセリフを必死で覚えて、演じたことのない重要な役をやりきったのでした。
そのあとは、無我夢中で演じた割には誰が書いた台本なのかとか調べることもなく過ごしていて、ただそのセリフの断片は覚えていたのでした。
その後、20年ぐらい経ってから、その断片的な記憶を手掛かりに、インターネット等で調べたのだと思います。
今ではそれが、ベルトルト・ブレヒト作「コーカサスの白墨の輪」だったということが分かっています。ただ、その当時使っていた翻訳の版がどの出典だったかまでは分かりませんが。
ブレヒトの全集などが図書館にあるので興味がある人はどうぞ。約100年前の人で、結構下品な言葉が頻発しますが、それだけにその当時の庶民の生活がリアルに感じられます。
私がやってたのは、シモン・ハハヴァという兵士の役で、運命に翻弄されて、恋人のグルシェ・バハナッツェとすれ違ってしまう。ムーミンに出てくるスナフキンっぽいところもあって、地面に座り込んで小刀で木を削り、鳥を彫ったりします。また、ことわざを引用したりして、当時の私の不思議ちゃんキャラともマッチしていたのだと思います。
私は、声を張ると喋っていることを忘れる性質があったので、声を張ってある程度の文章を喋るということ自体にすごく苦労したのを覚えています。そんな私に付きっきりでプロンプト(助け舟)を出してくれた劇団からきた指導者の方には今でも感謝してます。
ただこれは、普通に高校生活を送っていたらなかなかできなかった貴重な体験の一つだと思います。テレビのインタビューも受けました。私のところは、変なことを言ったのでカットされましたが。
県内の演劇部員と知り合えてその後、集まって遊んだり、大会に行くのが楽しみになったりしました。
ときどき、ステージに立ってセリフを忘れて困っている夢を見ますが、その原因は分かりません。
やす