私が目指している声の特質として、私が書いた文章を読んだ人が、私の声で脳内で再生してしまうような声、ということがあります。
以前そのような人に会ったことがあります。
その人はある合唱団のベースパートを担当しているのですが、喋る声もベースの音域で、重厚で温かみのあるこえです。
不思議なことに、その人から電子メールが来て読んでみると、その人の音声で文章が読まれるのを聴いている、いや恰もその人が目の前で喋っているかのような臨場感があるのです。
その経験から、「声」というものにはただならぬものがあると感じました。
単に、情報を伝達するというだけではなく、それを越えた何かが、声に潜んでいるのではないかという疑問を日々抱いていたわけです。
その漠然とした疑問に、形を与えてくれた一冊の本があります。
「声のサイエンス」
あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか
山﨑広子 著
NHK出版新書
です。
声というものの科学的考察を通して、普段見落としてしまいがちなことを再確認させてくれる本なので、声に関わる活動をしているかたには一読をお勧めします。
人間の体には声を出すための専門の機関は存在しない。
がゆえに、声にはその人の身体、心、過去、現在、未来すべてが現れる。
声は他人に影響を与えるし、自分にも影響を与える。そしてそのパワーは絶大。
自分の本当の声と出会って、それを使うことで自分と他人にいい影響を与えていくことができる。
声の持つ可能性はかなり大きいにも関わらず、そこまで自覚的に声を気にしてる人は多くないのではないか。
声を他人に届ける活動をしている人々、とりわけ私たちのような合唱グループは声を探究して、いいものを提供していかなければならない。
自分の本当の声を発見し定着させる為の具体的な方法も書いてあります。
自分の声と向き合うのは自分にしかできないことで、いろんなボイストレーニングに手を出すよりも根本的なことだ。
やはり、サイエンスは説得力があると感じました。納得できる記述がたくさん。
やす