若星Z☆つれづれ日記

若星Z☆=わげすたーづ、と読みます。 みちのく杜の都・仙台を拠点に活動しています。一緒にうたってみませんか?メンバー常に募集中。【連絡方法】 下記のメールアドレスまでご一報ください。 練習場所等のご連絡をさせていただきます。 演奏等のご用命もこちらへどうぞ。 アドレス wage-starz@hotmail.co.jp

とある新人の営業実録 【元広告営業】

一日100件 電話での営業

そのうちアポが取れるのは せいぜい10件

そこから成約になるのは 1、2件あるかないか

1%を取り逃さぬために

今日も続く リスト作りのサービス残業

見知らぬ町で 飛び込み営業

怖いのは 断られることではなく

仲良くなった客が

金の話になった途端に態度を変えること

「特別任務を言い渡す」

玉砕が続いた昼下がり

眉間にシワを寄せた上司が云う

「あそこのミスドで オールドファッション買ってこい」

その日初めての成功報酬は

渡された千円札の温かみと ドーナツの甘さ

つぶれかけたデパートの隅っこのベンチ

くたびれたスーツの吹き溜まり

「ああ あなたもサボリですか」

無言の視線が交錯する

行く宛のない営業のベースキャンプ

このペットボトルを空けるまで

そう自分に言い聞かせながらも

つい長居してしまう 同じ穴のムジナの巣

「君だから 頼もうと思った」 電話の向こうで 響く声

「この文句 いいねぇ」 提案の返信FAXに添えられた一筆

「評判がいいんだ」 広告を示しながらこぼれる笑顔

「また頼むよ」 信頼の証の言葉

蘇る記憶は

皆で立ち上げたプロジェクトでも

思い出作りの交流会でもなく

何気ない日常の一こまだったりして

資料の詰まったカバンの重み

流れる川の水面

行き付けの定食屋の照明の具合

働くとは 生きること

想像や憧れでは 決して補えない

「いつもの」景色こそが リアルな記憶

今日も向かいの定食屋に明かりが灯る

「いらっしゃい おつかれさま」

女将の笑顔に ほっと吐く一息

魚はこんなに旨かったっけ

とろろも たらの芽も

いつの間にか 冷の辛口もいけるようになっていた

「大人になったのかな」

「大人を通り越して オヤジだよ」

常連同士の気安さで すかさず鋭い突っ込みが入る

一人暮らしの我が家に 帰りたくなくなるひととき